第105回 HITOTSU学公開講座 (2015.3.15)

今回の講座も多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。公開講座「フランス革命と尊厳民主主義」全3回シリーズの最後となる第3回目を迎えました。

今回は、過激派組織IS(イスラム国)による日本人人質殺害事件をはじめとして、依然として勢力を拡大させているISと混沌とする中東情勢に真っすぐに向き合うことの必要性と意味を共有するところから始まりました。
そして、そもそも「イスラム教」とは何かということを、日本から尊厳民主主義を築く上でどのように考えていけばよいのか、柔らかい視点で皆様と一緒に考えていきたい事をお伝えいたしました。

メインテーマに入る前に、まずはHITOTSU学の概論をお伝えしました。
人間は理性・思考能力を使い、現実世界におこる様々な現象を体系化させて、多様な学問を作ってきました。
しかし、人間がこの現実世界を認識する時に使う五感覚脳の機能は、真実を認識できない不完全な判断基準を備えてしまっています。この根本問題を自覚しないまま学問を作っていることの問題点や、さらには個人や集団の観点に固定して、摩擦・衝突が終わらない「観点の問題」がある事をお伝えいたしました。

アインシュタインが「いかなる問題もそれを作り出した同じ意識によって、解決することはできません。」と語っていたように、あらゆる問題解決には、人間の意識の次元上昇(新しい認識方式の獲得)が必要という事をお伝えしました。

次に、第1回目の内容をポイントで振り返りました。
詳しい内容をご覧になりたい方は、第1回目開催レポートをご覧ください。




 

なぜフランス革命なのか

2015年は大きな変革が起こる年だと捉えている方は、多くあります。戦後70年を迎えた日本を取り巻く韓国・中国との複雑な外交関係、イスラム圏と西洋社会との摩擦・衝突、天然資源をめぐる石油戦争、ウクライナ情勢、ギリシャなどのユーロ圏における経済危機など、世界の至る場所で火種があり、いつどこで問題が爆発するかわかりません。
特に、冒頭でもお伝えしたISの勢力化と混沌とした中東情勢は、フランス革命から始まった近代社会の枠組みである資本主義、民主主義、国民国家といった統治システム自体に「NO」を突きつけている問題だと観て取ることができます。
イスラム圏との摩擦・衝突は西洋の近代社会の原点であるフランス革命から作られた枠組みから考えていかないといけません。西洋近代から生まれた恩恵も沢山ありますが、超えていかなければいけない点も多々あります。

今、テレビで目にするイラクやシリア、パレスチナなどでの紛争にはイスラム教が大きく関わっています。イスラム教は平和を愛する宗教なのですが、攻撃的な宗教と捉えてしまいがちではないでしょうか。
イスラム圏と西洋とが大きくぶつかるポイントは、西洋近代は「人間の理性」を絶対視し、イスラム社会は人間の意志を超越した神の意志を絶対視するところです。
西洋では、古代中世で絶対視していた神の意志、それに基づく絶対王政による支配体制がフランス革命以降でひっくり返されます。人間社会を支配する神を中心とした世界観がひっくり変えされた事によって、神の意志の上に人間の理性を置いたのです。理性が目覚めた事による西洋近代啓蒙主義は、人間の理性の勝利とみています。
しかし、西洋が絶対視する「人間の理性」による価値観は、わずか数百年しか経っておらず、イスラム社会では、そもそも「人間の理性」には限界があり、全知全能である唯一神のアッラーからの啓示(神からのメッセージ)が必要不可欠という価値観があります。イスラム社会と西洋とのボタンの掛け違いがみえてくる観点の異質性の問題点をお伝えしました。

次に、第2回目の内容をポイントで振り返りました。詳しい内容をご覧になりたい方は、開催レポートをご覧ください。



そもそも、私たち日本人はイスラム圏の文化を学ぶ機会も少なく、イスラム教の聖典であるコーランを読んだことがある人は少ないのではないでしょうか。これが意味するところは、向き合う相手がどういう観点を持っていて、何を重要視するのかの判断基準を知らないということです。イスラム教徒は世界で16億人を超え、世界全人口の4分の1を占めるとされています。
ISや中東情勢の問題は、西洋の教育だけを受けている中では理解しにくいところがありますし、西洋の近代の国民国家の概念に収まらない問題があります。
2010年に同志社大学がアフガニスタンのカルザイ大統領を招待し、ある学生が「タリバン政権崩壊後もなくならない紛争の原因はイスラムなのですか?」と質問した際、カルザイ大統領は「宗教が原因で争っているのではありません。欧米諸国が近代の国民国家の枠組みを押し付けるからです。」と答えたそうです。
一体、どういうことなのかが日本人にはわからないと感じる方も多いのではないでしょうか。そこには、どんな歴史的背景があるのでしょうか。

現在の中東問題の根源となった歴史的背景には、100年前に秘密裏に結ばれたいわゆるイギリスの三枚舌外交があります。
サイクス・ピコ協定(1916年)・・・第一次世界大戦後のオスマン帝国における領土分割をイギリス、フランス、ロシアが交わした秘密協定。
バルフォア宣言(1917年)・・・戦争資金提供の見返りにユダヤ人のパレスチナへの民族的故郷の建設を支持した宣言。
フサイン・マクマホン協定(1915年)・・オスマン帝国打倒への見返りにイギリスはパレスチナにおけるアラブ人の統一国家樹立に協力するという約束。

中東の観点に立場チェンジしてみれば、中東の文化文明、民族性を無視して、一方的な西洋諸国の思惑だけで国境線を引かれたことへの反発があることが考えられるのではないでしょうか。

今回、お伝えしたかった中心の問題意識は「観点」です。無意識に自分がつかまっているのが観点です。観点固定されている争いの根本問題を解いて、フランス人権を超える1人1人の尊厳を目覚めさせ、尊厳民主主義を日本が世界に広げるべき新たな政治を展開させていく、日本が果たすべき使命があることをお伝えいたしました。

回の最後には、HITOTSU学創始者・Noh Jesu氏からポエム「侍の剣、暗闇の剣」が送られました。21世紀の侍である日本の皆様と共に日本から平和と尊厳をつくっていきたいと願っています。

今回の講座も多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。
公開講座「フランス革命と尊厳民主主義」全3回シリーズは、今回をもちまして終了いたしました。沢山の皆様にご来場いただき誠にありがとうございました。

来月は、「Noh Jesu特別講座」が4月19日に開催されます。どうぞお楽しみに!